裁判を見ていたペトロの感想で、ちょっと興味深いところがあります。まず引用してみます。
「ペトロは、目の前で祭司たちが愚かしい喜劇を演じるのを見ていた。だが師イエスが言った『神の筋書き』という言葉には得心のゆかぬものが残った。師イエスは神という言葉を日ごろ口にしたことがなかったからである。」
あれほど祭司たちを驚かせた言葉なのに、ペトロは「そうだ」と反応しないで、かえって疑問を感じてるんです。作者はペトロの心の中もカッコで書いてます。
「(ひょっとするとそれは、祭司たちが戴く『神』の正体を白日の下に曝け出すための、師特有の皮肉であったのかもしれないが……)」
これってきっと、祭司たちが神を畏れない者たち、神の前で平気で偽りを行なう者たちであることを、イエスが曝露したってことではないかしら? イエスは神に対する不敬罪でさばかれるんですけど、ほんとうに神を敬っていないのはこの人たちです。ペトロはそのためにイエスが日ごろ口にしない神の名前を出しておどかしたんで、それで「先生の皮肉だったのかな」って考えたんじゃない?
じゃあ、イエスは神のことをどんなふうに考えていたんでしょう? 最後の晩餐の席でシモンが絡んだとき、イエスは「お前は神を何処かにいるものと思っているようだが、そういう神ならどこを捜してもみつかるまい」って、言ってましたね。そして「お前はここにいるではないか。神の心とはそういうものだ」と、謎めいたことを言ってました。わかりにくいけど、ちょっとわかるような気もします。でもこのへんで。
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