イエスとユダは先にゲッセマネに着いています。ユダはすでに何人かの仲間をそこに待機させています。おそらく約束を破られたときの用心のためでしょう。
「季節は春の到来を告げていたとはいえ、夜風は冷たかった。立っていると底冷えがした。そこに居合わせた者たちはみな肩をすぼめ、押し黙ったまま、奈落の底を覗き込む人のように項垂れていた。」
情景が目に浮かぶようです。でもそれだけではなく、そこにいる人たちの心も冷え込んでしまっているのが伝わってきます。イエスもペトロもユダもとても緊張しているんです。それにこれから逮捕されて死んでしまうことが分かっていれば、心の中は真っ暗にちがいありません。「どうかこの杯をわたしから取りのけてください」っていうイエスの言葉を、作者はリアルな状況設定で巧みに描きだしいていると思います。
わたしは神の子というより、人間であるイエスのほうが好きです。絶望の底でうめいているイエスが。それがほんとうの神の子なんです、きっと。作者はそう言ってるように思います。
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