マリハムはイエスに対面します。
最期の晩餐からまだ一日も経っていません。ひどいスピード裁判のあげく処刑されてしまった夫の変わり果てた姿をまえにして、マリハムは胸が張り裂けそうだったにちがいありません。でもその辛さを抑えて気丈にふるまう彼女の、なんといじらしいことでしょう。その場面を、ちょっと失礼して……
女たちはその姿をみると、あっと声を挙げた。だがマリハムは取り乱すことなく、イエスに近づいた。その顔は眠っているように見えた。かの女はイエスの遺体を覆っている外套(サガム)を僅かにずらした。胸部が露わになった。その躰はヨセフの従者らの手によってすでに浄められていた。
「ラボニ」
マリハムはイエスに向かって呼びかけると、その手を握り締めた。イエスの手は氷のように冷たかった。かの女はその手を握ったまま、もう一方の手で夫の髪を撫でた。髪は雨のせいで湿っていた。その髪を指で梳こうとすると、額に茨の棘の跡が露われた。かの女は指で傷口をさすった。かの女は無言のまましばらくそうしていた。女たちの啜り泣きが聴こえた。
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