第9節に入ります。
場面は変わってマカイルス城砦。そこは死海に面した隔絶の地です。
そこに洗者ヨハネが幽閉されています。
物語は、独房から引き出されたヨハネがヘロデの尋問を受ける場面に移ります。
ヘロデはヨハネと一対一で向き合い、自分の過去やいまの境遇などを話します。きっとふだんは誰にも言わないことをヨハネに告白したかったのでしょう。
この二人の対話で面白いのは愛についての問答です。
ヨハネは、ヘロデが言う「愛」は「欲」だと言います。これに対してヘロデは愛と欲はひとつのものだと言います。たしかに愛には崇高な感じがあります。それに対して欲は人間的。
普通のひとはヘロデのように生きているのではないかしら。ヨハネはそれを頭から否定しているのではなくて、ヘロデの王としての自覚を問題にしているのです。そしてこう言います。「わたしがおまえに言うことは、ただ一言、悔い改めよ」と。
ヨハネの許しを期待していたヘロデとしては、目算がはずれてしまいました。かれは「この偽善者め!」って捨て科白を吐いて、ヨハネをまた独房に押し込めます。
2023年5月1日月曜日
愛と欲
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