2020年5月16日土曜日

糞の門


 「……あゝ、ガリラヤに帰りたいね」
 そう言いのこして去ってゆく男の背にむかって、ペトロは「あの門を何と言うのかね?」ってききます。男は「糞の門だ」って言って、振り返りもせずに去ってゆきます。
 それにしても糞の門なんて、ずいぶんひどい名前。そんな門が実際にあったんですね。ペトロは、昨晩イエスといっしょにゲッセマネに向かったとき、この門から出て行ったことを思い出します。ちょうどトラックを一周したみたいに。その間にいろんな出来事が起こりました。でもいいことはなにひとつなし。イエスは殺され、その遺体も消えてしまいました。ペトロは重い腰をあげます。
ペトロはそれから半日かけて塵芥の山を廻り、師の遺体を捜した。他人にも麻袋を見かけなかったか訊いてみた。それらしいものはあったが、中身が違っていた。
 かれは糞の門から城壁の中に戻ってゆきます。そこはユダが住んでいたアクラという貧民窟。
(もしやユダはそこに帰っていないか)微かな期待を込めて、ペトロは「隠れ家」のほうに向かって歩んでいった……
 第一章の回想部分はここでおわって、ふたたびガリラヤの湖畔に立つ老マルコに戻ります。そこはつぎに……

0 件のコメント:

コメントを投稿

第2章について

  『マルコによれば』第2章について書いてきました。ここでちょっとこの章について感想を述べてみます。  本章は時系列からいうと第1章(プロローグ)の前に位置します。第1章はイエスの「 公生涯 」に沿った物語展開でした。本章はその前史で、作者が想像的に描いたものですが、イエスがキリ...